医療法施行規則改正について

医療法改正による医療事故調査制度の運用が開始されて1年が経とうとしています。

運用開始当初、年間1300~2000件の報告がされるものと試算されていました。

ところが、運用開始から1年が経とうとする時点で累計356件の報告しかされていません。

 

【参考:日本医療安全調査機構 PressRelease】

https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/houdoushiryo20160909.pdf

 

その原因はどこにあるのか、様々指摘されているところではありますが、一番大きな理由としては、事故調査を開始するかどうかというスタートの段階で、“予期せぬ死亡・死産”という抽象的な概念に該当するか否かを当該医療機関の管理者が判断することとされていることにあるのではないでしょうか。

“予期せぬ死亡・死産”という基準が曖昧であり、当該医療機関の管理者において判断がつかない、場合によっては恣意的判断もされかねないという実態があるようです。

 

そうした問題を解消するために、本年6月24日付で、医療法施行規則(以下、単に「規則」)が改正されました。

改正の要点は大きく次の2点です。

 

①当該医療機関における死亡・死産の確実な把握のための体制の確保(規則1条の10の2第4項)

 

②医療事故調査等支援団体による協議会の設置(規則1条の10の5)

 

これらの改正について、厚労省医政局から同日付で留意事項が通知されています。

 

これを見ると、まず②について言及がされており、協議会は中央と地方(各都道府県の区域が基本)に設置され、協議会において情報共有や意見交換を行い、医療事故調査制度上の「医療事故」該当性、すなわち、“予期せぬ死亡・死産”に該当するか否かの判断について標準的取扱いが実現されることを目的としていることがわかります。

もっとも、協議会での意見交換の結果示された標準的取扱い方法については、何らかの拘束力を持つものではなく、従来の取扱を変更するものではないとの注意書きも付されています。

これは、“予期せぬ死亡・死産”に該当するかどうかの判断に苦慮して報告が遅れたり、誤った判断で報告されないことがないようにという趣旨の取組みであると理解されます。

 

また、同通知では、医療事故調査・支援センターの業務についても言及があります。

この中で、同センターが遺族等から相談があった場合、遺族等からの求めに応じて相談内容等を当該医療機関に伝達することとされています。

これは、当該医療機関の管理者が恣意的判断により報告をしなかった場合等に有効に機能することを期待しての取組みであるものと思われます。

 

【参考:医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について】

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000128534.pdf

 

【参考:医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について】

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000128535.pdf

 

こうした中、私が常任理事を務めている医療事故情報センターでも、医療事故調査制度開始からちょうど1年となる10月1日、「医療事故調査制度110番」を実施します。

医療事故調査制度に関する実態を、我々なりに把握しようという取組みです。

平成27年10月1日以降に医療行為に起因して患者さんを亡くされた(あるいは死産であった)ご遺族の方を対象に、お電話での対応をいたします。

広く集中的に情報を集めたいとの考えから、全国からのお問い合わせを、医療事故情報センターにおいて全国共通番号(052-951-1731)にてお受けします。

 

詳細はこちらをご確認下さい。

医療事故調査制度110番