先日、次のような報道がありました。
医療ミスや不適切な医療行為を繰り返していたとして、日本医師会が、2013~2016年の間に27名の医師に対し、再発防止を指導・勧告していたというものです。
【毎日新聞 2017.6.26】
https://mainichi.jp/articles/20170626/k00/00m/040/115000c
この報道で、繰り返し医療事故を起こしてしまう“リピーター医師”に対する指導・改善を求める仕組みがあることを知りました。
上記報道の内容と、日本医師会のホームページで公表されている「医療事故を繰り返す医師に対する「(仮称)指導・改善委員会」の設置について」(日本医師会 会員の倫理・資質向上委員会(平成25年2月))とから、医師賠償責任保険の運用を、リピーター医師への指導・改善につなげる契機としていることがわかります。
【医療事故を繰り返す医師に対する「(仮称)指導・改善委員会」の設置について】
http://dl.med.or.jp/dl-med/nichikara/houkokusyo/kairin24.pdf
運用の趣旨としては、リピーター医師に対する自律的対応というところにあるようです。
私たち弁護士にも、弁護士会という職能団体としての自主性・自律性の観点から懲戒制度が設けられているところですが(弁護士法56条~)、懲戒の内容や制度運用の仕組みは大きく異なるようです。
報道にあるように、4年間で27名というのが多いのか少ないのかという評価は、正直なところよくわかりません。
不幸にも医療事故を繰り返してしまう医師がそれほど大勢いるとも思えませんし(そう願いたいという気持ちもあります)、もしかしたら氷山の一角なのかもしれません。
いずれにせよ大事なのは、単にリピーター医師をピックアップすることに終始してはならないということだろうと思います。
職能団体としての自律性を突き詰めていくのであれば、事実を適時・的確に拾い上げていく姿勢ももちろん重要です。
しかし、真の目的は、なぜ事故が繰り返されてしまったのか、単に当該医師の素因によるものなのか、院内のシステムとして事故が続発し得る環境であったのか、偶発的に続いただけなのか等を検証し、改善の可能性があるならば改善につなげていくことにあるはずです。
そうした仕組みがきちんと機能しているかをチェックする意味で、確認された情報は極力公表してほしいとは思いますが、報道の中で「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」代表の永井裕之さんが言及しているように、少なくとも医療界の中できちんと情報共有ができるような仕組みにしてほしいと思います。
起きてしまった事故・事象に蓋をしてしまうのではなく、それを教訓として医療界全体で共有していくことが、医療安全の水準の底上げにつながっていくのではないでしょうか。