環境管理も医療安全の一環

時折、病院の中で薬品が持ち出されたり紛失したりしていたという報道を目にすることがあります。

 

【朝日新聞 2016.10.21 患者の点滴に穴、鎮痛剤アンプルなくなる】

http://www.asahi.com/articles/ASJBP2S9NJBPTZNB001.html

 

【中日新聞 2017.8.18 市民病院看護師が麻酔薬盗んだ疑い】

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2017081890134230.html

 

下の事件のように、故意的に持ち出されたという場合は、持ち出した側に主たる問題があるのは言うまでもありませんが、そこに責任を押しつけるだけでおしまいということではいけないのだろうと思います。

医薬品は、良くも悪くも健康に影響を及ぼすものです。

使い方や量によっては生命の危険もあります。

これがきちんと管理されず、持ち去られてしまった場合、単に病院としての経済的被害という以上に、たとえば入院している患者さんや全く関係のない第三者にまで危害が加わる危険もあります。

 

こうした場合、本来被害者であるはずの医療機関の責任はどう考えることになるのでしょうか。

理屈の上で言えば、本来きちんと薬品を管理(薬品室の施錠、定期的な在庫確認、入出庫の記録、薬品を乗せたカート等を放置しないなど)しなければならなかったところこれを怠ったと評価される以上、結果発生への寄与度は考慮されるにしても、まったく責任がないということにはならないはずです。

私が昨年受講していた医療安全推進者講座でも、「事故防止職場環境論」の中で、次のような記載がありました。

 

===以下引用===

( 6 )薬品棚の整頓

 薬品棚の置き場の表示を徹底し、置き方も平行・直角に置くようにルール化している・・・。

【効 果】

○ 薬品が定置に置かれる

○ 薬品の在庫がひと目で分かる

○ 置き場所が決まっているため、間違って取り出すことがない

===以上引用===

 

薬品を間違って取り出したりしないようにという目的のほか、薬品棚を整理整頓しておくことで、薬品のあるなしがひと目でわかるようになるということです。

これは、単に在庫切れを回避するという以上に、本来あるはずのものがないことに気づくことができるという効果も含まれていると理解されます。

当然、あるべきものがないとなれば、どこにいってしまったのか、所在を確認しなければということになるはずです。

見方を変えると、このようなちょっとした心がけで、大事に至る前に手を打つこともできるようになるわけです。

 

ひとくちに「医療安全」と言っても、その定義は必ずしも一義的ではないのでしょうが、信頼される医療を行うことも医療安全に含まれるのであれば、こうした医療を行う環境の管理も、医療安全の一環として見ていかねばならないのでしょう。